なぜ?1/4800地形図

琉球列島地形復元

1948年作成、米軍地形図の縮尺は1/4800という半端な縮尺なのかという個人的疑問が解決できたので、ここにまとめておきたいと思います。

琉球列島地形復元では大変お世話になっている、1948年米軍作成1/4800地形図。研究では、いつも見慣れているのですが、なぜ『1/4800』という半端な縮尺なのか。この縮尺では1㎜=4.8mとなり、1/5000でないのは使いにくいと考えていました。幸いGISデータとしてしまえば、縮尺は気にならないので、そのままにしていました。しかし、私なりに、なるほどという理由が見つかりましたので、アップしておきます。

1. ヤード・ポンド法の地図

地図には以下のようなスケールバーが入っています。それぞれ feet Yards Meters 単位のスケールバーが記述されています。

このスケールバー群をcmメジャーで計測すると以下のようになり、スケールバー内のどの区分けともcmメジャーの目盛り線は一致せず、この縮尺1/4800では、cm単位のメジャーを使って実距離を求める場合、簡易な縮尺変換(例えば1cm→5m)が適用できない。縮尺バー1200ftは7.62cmとなってしまう。

一方、沖縄戦(1945)当時に作成されたグリッド地図(https://www.gis-okinawa.jp/blog/%e6%b2%96%e7%b8%84%e6%88%a6%e3%81%ab%e3%81%8a%e3%81%91%e3%82%8b%e7%b1%b3%e8%bb%8d%e3%82%b0%e3%83%aa%e3%83%83%e3%83%89%e3%81%ae%e5%be%a9%e5%85%83/)では、この地図を作成する投影法ではyd単位で処理が進められている。従って、1948年地形図が、ヤード・ポンド法で作成されているものと推定される。そこで、これらのスケールバー群をftメジャーで計測すると以下のようになる。

1200ft 及び 400yd サイズのスケールバーが3インチとなる。3ft =1yd であるので、ftスケールバーとydスケールバーの違いは単純に3倍値という関係であので、フィートだけで検討すれば良いことになる。

この縮尺で実距離をヤード・ポンド法で扱うと、3in →1200ft より、1 in →400ft、0.5 in(a half inch) →200ft , 0.25 in (one quarter inch) →100ft 、さらにこの半分、1/8 in (one eighth inch ) は50ft となる。『半分の半分の・・』と表現していくと非常に扱いやすい実距離の値となる。

ところで、通常使うインチ単位メジャーのメモリは、写真のように、インチの半分、さらにその半分、さらに・・と補助目盛が刻まれている。このメジャーでは1/16インチが最小メモリとなっている。従って、1/16in のメモリをそのまま使って、実距離25ftで読み取ることができ、非常に扱いやすい数字となる。

一方、メートル法メジャーでは1㎜→4.8m、1㎝→48mと扱いずらい値となってしまう。この地形図は、ヤード・ポンド法のメジャーを使って測定を行えば、距離の読み取りは、非常に扱いやすものとなる。

2. 縮尺1/4800

縮尺1/4800という半端な縮尺の原因も、この地形図がヤード・ポンド法で作成されているためである。大きな原因は1フィート=12インチという10進数ではないためです。
この地図上の1in は、実距離は4800in これをフィートに換算すると400ft となります。仮に縮尺が1/5000(国土基本図の縮尺)であれば、5000inになりフィート換算で416.67ft と端数が付き扱いにくくなってしまいます。
『1フィート=12インチ』という単位換算が、縮尺1/4800の原因で、ヤード・ポンド法で作成された地図では12の倍数を使った縮尺が扱いやすい縮尺になるということです。

まとめ

ヤード・ポンド法やメートル法で作られた地図であるかなどはさほど気にすることなく、ジオリファレンス処理を行ってGISデータとし、GIS上で使っている距離単位で空間処理が可能で、その縮尺など気にせず利用してきました。
以前、沖縄戦(1945)当時に作成された1000ヤードグリッド地図から、ヤードを単位とした地形図を扱うことで、1000ヤードグリッドを現在の地図上に復元できた。
また、ヤード・ポンド法の地形図やメジャーなどを利用すると、縮尺1/4800という紙地図は非常に使いやすい地図であったことを今回再認識した。

十進数のメートル法にはない便利な機能と、先人の工夫に今回も非常に感動しました。

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