米軍グリッド位置確認ツール

沖縄戦

沖縄戦の資料に頻出する「グリッド番号」

 沖縄戦に関する米軍の作戦報告書や記録には、地図上の位置を示すために「グリッド番号」が数多く登場します。しかし、その番号が現在のどの場所を指しているのかを確認するのは容易ではありません。これまで研究者や調査担当者は、地図や航空写真を突き合わせながら地道に照合する必要がありました。

こうした米軍グリッドは、戦没者の埋葬場所を特定する手がかりとしても重要です。近年、遺骨収集の取り組みの中で、米軍記録に残された「グリッド番号」と実際の埋葬地を結び付ける調査が進められています。NHKでもこの課題が取り上げられ、一般の方にも広く知られるようになりました。

このように「グリッド番号」は、歴史資料を読み解く鍵であると同時に、戦没者を故郷に帰すための大切な手がかりでもあります。

米軍グリッド位置確認ツールとは

 今回公開する「米軍グリッド位置確認ツール」は、野外での位置確認作業を想定したスマートフォン対応版です。スマートフォンのブラウザで起動し、背景には国土地理院が提供する地形図およびオルソ空中写真を利用できます。
 グリッド番号を入力すると、その中心位置がマークされ、周辺の1000ヤードおよび200ヤードのグリッド線も同時に描画されます。さらに、スマートフォンのGPS機能を用いて現在位置を表示できるため、現地調査やフィールドワークにおいて即時の位置確認が可能です。難しい操作や専門知識がなくても、誰でも利用できます。
 研究者や調査担当者の現場利用から、歴史に関心のある一般の方まで、幅広く活用できるツールです。

→ [米軍グリッド位置確認ツールはこちら] または 下記のQRコードから

米軍グリッド位置確認ツールの使い方

このツールは、webブラウザー上で、javaスクリプトとhtmlで動作するもので、スマフォアプリではありません。地図や空中写真も国土地理院のタイルセットをネットから利用しています。

1)上記のサイトに入るとツール起動画面①になります。
2)起動画面の『1000ydGridID:』に4桁のグリッド番号を入力します(例:7961)。最低限『1000ydGridID:』の入力は行ってください。必要であれば、『200ydGridID:』にA~Yのアルファベット、『100ydGridID:』に1~5の数字を入力します。
3)入力後、『緯度経度変換』ボタンを押します。入力した米軍グリッドの中心点を緯度経度座標に変換した結果を表示します②。
4)緯度経度変換後、『地図表示』ボタンを押します③。入力米軍グリッド周辺の地形図、赤線の1000ydGrid線とオレンジ色の200ydGrid線、グリッド中心点に青色マーカーを配置したマップビューがっ表示される③。
 マップ左上の『+ー』ボタンでマップ拡大縮小できます。地図をドラックすると地図の移動ができます。地図表示を変更することができます。④は拡大&表示位置の移動を行っています。

5)『現在位置/再描画』ボタンを押すと、地図上に現在位置を赤マーカーを配置します④。また、現在地を米軍グリッド変換した情報と、ターゲット(青マーカー)までの距離を表示します。現在地の米軍グリッド表示は100ydGridまでの詳細表示になっています。
6)『空中写真』と『地形図』ボタンは、背景図を空中写真⑤/地形図④へと切り替えるボタンです。
7)現在位置の表示はインタラクティブには行いませんので、移動したら『現在位置/再描画』ボタンを押すことで、最新の位置情報を表示するようにしてください。

7)ターゲットの米軍グリッドに近づくためには、⑤~⑦を参考にしてください。
ターゲット方向に移動し、ある程度移動したら『現在位置/再描画』ボタンを押し、最新の現在位置情報を確認するという操作を繰り返します。
青マーカーは、指定したグリッドの中心です。グリッドエリア内に入ったかは、『現在地の米軍グリッド:』表記をご確認ください。『ターゲット米軍グリッド:』の記述を含む表現になった場合はそのグリッド内に入ったことになります。『現在地の米軍グリッド:』は100ydGrid精度で表現しています。100ydGridは、200ydGridの4分割の左上1、右上2、左下3,右下4となり、中心付近の100yd四方は5と表される。例えば『7961E4』とは、200ydGrid『7961E』の4分割右下に位置します。また、『7961E3/5』という表記は、中心付近の100yd四方かつ左下に位置することを表しています。地図上に表記されたグリッド線から判断することも可能です。1000ydGrid線は赤色、200ydGrid線はオレンジ色で表しています。
8)ターゲット位置を確認後、別の米軍グリッド位置の確認作業を行う場合は、『リセット』ボタンを押してください。

技術的背景について

 本ツールは、米軍が使用した地図投影法(多円錐図法)をもとにグリッドを復元し、現在の地理座標に対応付けています。詳細な復元手順や座標計算については、以下の記事にまとめていますのでご参照ください。
沖縄戦における米軍グリッドの復元
沖縄戦における米軍グリッドの復元2
沖縄戦における米軍グリッドの復元3

今後の展望

 現在は沖縄本島周辺(伊江島を除く)を対象としていますが、今は対応していない地域などへの拡張も視野に入れています。また、利用者からいただいたご意見を反映し、研究や教育現場でより使いやすい形に改善していく予定です。コメントで使用感想等をアップしていただけると幸いです。
 「米軍グリッド位置確認ツール」は、沖縄戦資料と現代の地図をつなぐための実用的な手段です。研究者・実務者はもちろん、沖縄の歴史に関心を持つ方々にもご活用いただければ幸いです。

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